3:風景を守る技術
2:環境技術の提案
1:百姓仕事が自然をつくるワケ

 環境稲作のすすめ
 コメだけが、田んぼの「生産物」ではない


これは「環境稲作研究会」(藤瀬新策会長)が出版した「環境稲作のすすめ」から、ジャンボタニシ活用除草法、カブトエビ活用除草法、中耕深水除草法の一部を抜粋して掲載しています。
くわしいことは、農と自然の研究所出版物案内で、「環境稲作のすすめ」(500円)を注文してください。
                    本文執筆者:宇根 豊(農と自然の研究所代表)


1、環境稲作とは何か
 私たちは農薬を減らす、無農薬で栽培することによって、安全な食べ物を生産するという次元からさらにすすんで、その環境への影響までも考える稲作のことを「環境稲作」と命名しました。減農薬・無農薬にすれば、すぐに環境は豊かになるというほど、甘くはありません。たぶん長い時間をかけて、徐々に環境を復元していくしかないでしょう。そのような地道な運動と農業技術が求められているのです。
最近「環境保全型農業」という言葉がよく使われていますが、環境に負荷の少ない農業ならなんでもいいという感じで使われています。(緩効性化学肥料がいい例です)その程度では、いつまで経っても百姓が自分の手で環境をとらえることはできないでしょう。
ここでは主に糸島地域で会員が実践している除草剤に依存しない稲作技術を紹介します。病気や害虫に対して農薬を使わない技術は、糸島ではすでに確立しているので、ここでは取り上げません。また会員が把握し、表現した環境については、別の出版物でまとめられるはずです。


2、なぜ除草問題が残ったか
最近では、雑誌『現代農業』誌上を中心に、除草剤に頼らない稲作技術が一挙に開花し始めたような気がします。たかだか50年間のいびつな除草剤技術に、対抗する技術がやっと勢力として見えるほどになってきたということでしょうか。それは、除草剤技術にはない豊かさをいっぱい蓄えた技術です。


3、稲守貝(ジャンボタニシ)稲作

 稲守貝の歴史
福岡県では1981年頃から食用としての養殖が始まりました。前原市では83年養殖が開始されています。ところが、放棄された養殖場から逃げ出した貝が、「害虫」化したのです。稲への被害は前原市では83年から被害が出始め、多くの予算をつけて駆除活動が続きました。多くの百姓が田に入って取って回りましたが、貝の棄て場所に困るありさまで、死臭が漂い皆が憔悴しきっていました。
そんなとき1989年に前原市雷山の大平正英さんによって、全国ではじめてジャンボタニシの食草習性を活用した無除草剤農法が試みられ、小川武臣さんに引き継がれ、さらに92年より田中幸成さんら七人によって組織的に研究され、1993年より「稲守貝研究会」(田中幸成会長)が結成され、本格的な普及が始まりました。稲守貝(いなもりがい)というのは、研究会とJAが公募したジャンボタニシ(正式にはスクミリンゴ貝)の愛称です。この貝を活用し、除草剤を使用しない米はJAによってグリーンコープ生協に販売されています。
ジャンボタニシの根絶は前原市の失敗でもわかるように、不可能なばかりか、弊害すら出ています。今ジャンボタニシは西日本各地に広がっています。だからこそ活用するこの農法は全国から注目され、視察者が相次いでいるのです。

 具体的なやり方
1:田植後、15〜20日は「ひたひた水(超浅水)」にする。高いところが水面上に出るぐらい。低い部分は3〜5p。(均平な田は0〜2pの浅水でいい)
2:もちろん除草剤は使わない。除草剤を使うから、水をためなければならず、しかも草が枯れてしまって、餌がないから稲を食べることに気づくべきです。
3:田面の高いところだけは、草がはえてくるが、稲が大きくなるまでがまんする。
4:田植後15〜20日たったら、水をためる。(低いところで10p、高いところで3pぐらい)草の成長が早いなら、早めに1〜3日浅水にしてみて、すぐ落水してもいい。
5:ジャンボタニシは一斉に草のある高いところに移動していき、草を食べる。

 重要なポイン
1:田んぼの中のジャンボタニシで、3p以上の貝は秋・冬・春のロータリー耕起で死んでしまうので、心配いりません。
2:水路から侵入する3p以上の貝は要注意ですが、湛水しなければ大丈夫。
(心配なら網目が2pのものを水口につける)
3:ジャンボタニシは1〜2pのものが、1uに2個以上おれば除草効果は心配ない
(草が少ない場合は1個/2uでもいい)
4:ジャンボタニシを利用しようとしまいと、田面を均平にしておくことが一番大切なことです。低い部分だけが食害されるからです。どうしても、低い部分が出て食害が出るようなら、タケノコが好きなので、それで引きつけるのも手でしょう
5:苗はできるだけ大きい苗にした方がいいので、1箱100g以下とし、30日苗以上としたほうがいい。そうすれば、最初から水深をもう少し深くしてもいいでしょう。
6:ジャンボタニシは自分の殻の高さの水深がないと、活発に動きません。つまり、被害の大きい3p以上の貝が動き回るのは、水深が3p以上の時です。この貝が水上に出るのは産卵の時だけです。卵は水没すると死ぬからです。
7:こうした水管理をすると、土の高い部分の肥切れがやや早くなりがちですが、除草剤によるダメージもないので、稲の生育には支障はありません。
8:よく、大雨で冠水するところでは難しいのではないかと質問されますが、そういところこそ、浅水管理のこの方法が有効なのです。現に前原市の新田や泊地区の冠水地帯では被害が劇的に減っています。

 今後の課題
@新たに導入すべきか
除草剤を使用しない除草法としては最も安価な方法と言ってもいいでしょう。しかし、ジャンボタニシによる被害に苦しんでいる地域で、活用に踏み切るのは当然だとしても、現在いない地域でも、他地域から導入してまで放飼することにはもうしばらく慎重にすべきでしょう。なぜならしっかり手入れをしていない水田では、被害が出る可能性があるからです。
A永続できるか
ジャンボタニシは新しい侵入生物です。この生き物がこの国に定着できるかどうかは、まだ時間がたたないとわかりません。ある程度増殖すればその後はむしろ幾分減り気味になるようですが、その理由もよくつかめていません。水田内で増殖し、水路に逃げ出すよりも、水路での越冬・増殖が大発生の原因ですが、水路と水田間の行き来はもう少し確かめる必要があります。
B生態系の改変
ジャンボタニシがいる田はそれこそ稲刈りの時まで、草一本もはえなくなります。これでは他の生き物も生きにくくなります。それは除草剤でもそうではないか、心配することはない、という意見もありますが、除草剤の代替技術ではなく、もっと上質の共生技術をめざしているのですから、安心していてはいけません。ジャンボタニシの登場によってどう生態系が変化しているのか、注意深く観察を続けていくべきでしょう。


4、カブトエビ農法(カブトエビ・豊年エビ・貝エビ活用濁り水稲作)

 カブトエビ活用の技術化
カブトエビ、豊年エビが糸島で増えてきたのはこの一〇年ぐらいではないでしょうか。とくにカブトエビが草を食べることは知られてはいましたが、それだけで除草がうまくいった例はほとんどなかったそうです。まして、戦後除草剤の登場で、研究は立ち消えになりました。ところが、1993年前原市加布里の藤瀬新策さんは「どこの田もカブトエビがいるが、うちの田だけが濁ったままだ。このままでは草も生えないのじゃないか」と考え、日本で初めてカブトエビによる濁り水稲作技術が発見されたのでした。この濁りが除草に役だつというところがすごいと思います。
 翌年実践した良川清茂さんは除草剤を散布した田んぼだけが濁りが澄むことを発見しました。除草剤の中の界面活性剤が水中に浮遊する濁りの原因である土壌コロイドを沈ませてしまうらしいのです。しかし、藤瀬さんの田んぼは除草剤を使っていた前年も濁っていたと言います。それは、膝下までめり込むぐらいに耕土が深いこと、しかもキャベツと稲の輪作で、長年キャベツの葉が鋤き込まれていて、土が肥えていて軽いからです。当然土壌微生物もミジンコも多いわけです。つまり除草剤の界面活性剤に負けないぐらいの土と生き物の力があったわけでしょう。土づくりの意味がカブトエビを通じて見えてきたと言ってもいいのです。

 カブトエビの生態
@アジアカブトエビとアメリカカブトエビ
アメリカカブトエビはアメリカ移民で米国との交通が盛んであった大正初期(1916年に香川県で発見)、アジアカブトエビは満州侵略で往来が激しくなった昭和初期(1930年頃)に同様にして、何らかの方法で帰化したという説が有力です。山形県だけにはヨーロッパカブトエビがいるようです。
 アメリカカブトエビやヨーロッパカブトエビは雌雄同体ですが、アジアカブトエビは雌雄異体であり、雌の方が甲羅が雄より楕円形に近いので見分けがつきます。糸島のカブトエビはアジアカブトエビです。よく田んぼで交尾しているところが見られます。九州では鹿児島県・宮崎県などの南にはいないようです。
 冬に乾く田が多く、とくに裏作をする田の方が多いのも事実です。カブトエビが中国では砂漠の生きもので、つかの間の雨期の水たまりで孵化し、急激に成長し、水たまりが干上がるころには、産卵が終わり、次の年の雨まで、卵は乾燥にたえて、生きるということです。よく考えれば、田んぼによく似ているではありませんか。田植までは、乾燥した土で、急に水がためられたかと思うと、7月下旬には中干しで落水される。こんな水管理にカブトエビはよく合っているのです。
3億5000万年前の化石には現在のものとほとんど同じものが発見されていると言うから驚きです。生きた化石といわれるわけです。
 大正時代に兵庫県農事試験場は「田の草取り虫」の試験をしているし、昭和初期には和歌山県でずっと利用されてきており、戦後も徳島県では「天然の2・4D」などと呼ばれていたこともあるそうです。しかし、その後藤瀬新策さんの発見まで発展はありませんでした。
Aカブトエビの食べ物
カブトエビは雑食性で、主にバクテリアや藻類や原生動物を水と一緒に口に入れ、ろ過して食べています。蚊の幼虫やミジンコや豊年エビも食べるし、野菜の腐ったものもよく食べます。キャベツの外葉などをすきこんだ田は大発生しやすいのでしょう。生物は生きたものも死んだものも食べます。共食いもするようです。草の幼芽も食べますが、除草には脚で泥を掘り返す(1〜2p)効果や、濁り水の効果の方が大きいでしょう。
よくカブトエビが土に潜り込むようにして、土をかきまぜているのが目撃できますが、これは餌をとっているのです。
B生活史
卵は直径0.4oぐらい。20〜30℃では、卵は2〜4日で幼生態で孵化します。その後一両日中に脱皮を数回くりかえし、急速に成長し、成体になります。そして10日もたてば底泥の中に産卵し始めます。産卵を始めた後からでも、次々に脱皮し成長します。卵は水温が30℃以上になると孵化しにくいようです。また卵は乾燥にめっぽう強く、藤瀬さんの発見でも確かめられましたが、土の中の卵は代かきなどでかき混ぜられて、水に浮いて孵化するのです。だから、代かき水を捨てることはもちろん、田植後もできるだけカブトエビの幼生がいっぱいいる水を捨てないようにすることです。
 近年の大発生は、卵が中国から飛んできた可能性もあります。
ただ、カブトエビの大発生は、直接は減農薬の成果ですが、それだけ田んぼの中の生き物(天敵など)が少なくなっているからかもしれません。
飼育すると80日も生きる個体もあるそうです、田んぼの中での寿命は20日〜30日と思われます。もちろん田んぼを中干しすると全滅します。
Cカブトエビの仲間

節足動物門・甲殻綱・鰓脚亜綱 板角目・・・・・ミジンコ類
甲貝目・・・・・貝エビ類
背甲目・・・・・カブトエビ類
無甲目・・・・・豊年エビ

これらの生き物は近縁で生態もよく似ていて、砂漠の生き物とも言われています。乾燥した砂漠にも年に1回ぐらい雨が降り、水たまりが1〜2カ月くらいできる。その期間に繁殖できる生物だというわけです。田んぼは砂漠と似ているのですね。
天敵はゲンゴロウ、カエル、魚、鳥などです。カエルの多い田はマズイかもしれません。
Dカブトエビ除草法のポイント
1、有機物をよく入れて、土づくりをよくする。それは、土を膨軟にして、水に濁りやすくするためと、ミジンコなどを増やしてカブトエビの餌を増やすためです。ミジンコなどは、それ自体も動き回って、水を濁らせます。
2、冬の間はできるだけ土を乾燥させる。麦や野菜を栽培するとよく乾くし、有機物も補給できていいでしょう。
3、代かき水や、その後も水を捨てない、落とさない。田植後5日して、水が濁っていればまず成功まちがいなし。
4、できるだけ大きい苗を植えて、深水管理にする。これは水を切らさないようにするためと、できるだけ、草に光をあてないためです。
このために、田んぼを均平化しておくことが大切です
5、田植後最低20間、できれば30日間は水をため、できるだけ多く産卵させるようにしましょう。

 豊年エビの生態
@海外からの渡来
稲作の渡来と同時に弥生人と一緒に農具の付着した泥の中の卵として移入したという説もあります。しかし、記録に残っているのは江戸時代からです。当時は豊年魚と呼ばれていて、金魚売りが売っていたそうです。背泳ぎするきれいなエビですから、観賞用にしていたとしても不思議ではありません。いつしか豊年虫と呼ばれていましたが、昭和になって「豊年エビ」と命名されました。
東アジアの中国、韓国、日本に多いようです。国内では関東以南にいます。
A生活史
6月初旬、水田への入水後、代かきの刺激で一昼夜で孵化し、ノウプリウス幼生となり遊泳します。幼生はプランクトンを捕食しながら成長し、約2週間で成体となり、雌は条件がいいと1週間ごとに産卵をくり返します。雌は10〜22o、雄は13〜16oでやや雌が大きい。
 豊年エビは夏の暑さに強く、雌は産卵しながら10月頃まで生存することもありますが、田んぼでは中干しで死んでしまいます。産卵数は1回に50〜500個ぐらいで、卵は乾燥に対してめちゃくちゃ強く、数年から10年も生きているようです。
天敵は多く、水鳥、魚類はもちろんカブトエビからも食べられます。
豊年エビがいるところには、カブトエビもいるようです。豊年エビだけで草を抑えることはできませんが、水を濁らせる効果はあります。
 貝エビの生態
田植えして、1週間ぐらいすると、よく目につきます。田んぼなどの浅い水底を這い回ったり、遊泳したりして、プランクトンなどを捕食します。体は左右2枚の二枚貝状の甲殻に包まれています。貝を縮小したような姿ですが、エビなのです。脚は11〜27対で葉状です。雌雄があり、卵生で発生後はノウプリウス期を経過します。岐阜県が北限、南限が福岡県だと考えられていますが、よく調べられていません。しかし、1億2000年前の化石が北九州市で産出しているそうで、侵入生物ではなく、日本の固有種です。
種類は、次の4種がいます。@タマ貝エビ Aヒメ貝エビ B貝エビ Cトゲ貝エビ

 エビ類に共通のこと
これらカブトエビ・豊年エビ・貝エビたちは、近縁の生物で、姿はまるで違いますが、生態は実によく似ています。
共通の特徴を整理してみましょう。
@田んぼで主に生息する。田んぼ以外では水路でも目にするが、田んぼで孵化したものが移動しているようです。
A卵は代かきのあと、水・温度(20℃以上)・光に反応して、孵化し、急速に大きくなります。土の中の光が当たらない卵は数年の寿命があるようです。
Bエビは孵化後20日後から、産卵をはじめ、親は30日〜40日で寿命がつきます。したがって、急にいなくなるような印象を与えます。
Cカブトエビは土(草の芽生えも)をかき混ぜ、丸ごと飲み込み食べる。豊年エビと貝エビは水中の藻類、ミジンコを食べます。
D卵は秋冬を土の中で越します。

 除草効果
@これらのエビたちの除草効果は、「にごり水効果」のほうが大きいのです。つまりエビが足で土の表面をかき混ぜるので、水が濁り、草の芽生えがおさえられるわけです。したがって、エビの数よりも、濁りやすい土かどうかが大事になります。
Aカブトエビは直接草を食べる習性もあるため、他の二種より除草効果はとくに顕著です。
B水が濁りさえすれば、50匹/u(カブトエビは30匹)で十分のような気がします。
Cいずれにしても田植後30日は、絶対水を切らさないようにしなければなりません。
D濁る土と、濁らない土の差は解明されていませんが、有機物の作用で土壌コロイドが変化しているものと思われます。有機物(堆肥など)を積極的に投入していけば、エビのエサも増えるし、にごり水効果が増すものと思われます。


5、中耕深水稲作
 にごり水の力に注目
 宮崎安貞の『農業全書』の中の有名な語句に「上農は草を見ぬうちに、中うちして草をとる。中農は草が見えてからとる。下農は見えてもとらない。」というのがあるが、このことばの現代的な意味がやっとわかってきました。田植後、草が見えないうちに(5日〜7日)除草機を押すと、水が濁ります。その濁った水(小さい土の粒子)が株元や株間にも広がり、わずかにのぞいた草の芽生えに土の粒子のカバーをする格好になるからです。そうすると草の生育は極端に抑制されてしまうのです。草の葉が大きく見えはじめる、田植後7日以降では遅いということです。もっとも、同時に除草機が通る条間の草は、除草機で埋没されたり、引き抜かれて水に浮いたりしますが、株間の草にも効果があるのです。
 除草機や合鴨以外にも、水を濁らせる生き物がいるではありませんか。カブトエビ・豊年エビ・貝エビ・ドジョウ・鯉・鮒などがそうです。つまり、合鴨もカブトエビも貝エビも豊年エビ活用稲作も、その原点は、中耕除草にあったと言うわけです。とにかく田植え後七日以内に、一回はしっかり水を濁らせることが何より大切です。そのために除草機を押すのです。だから水は浅水ではなく、やや深水がいいでしょう。もちろん深水効果も期待できます。

 手取中耕除草の時期
@代かき5〜8日:ひたすら水を濁らせます。濁りやすい土にするためには、有機物を土に増やすことと、ミジンコやオタマジャクシやトンボのヤゴなどの生き物をを増やすことです。もちろん絶対に水は切らさない。いったん土の表面が空気に触れると、濁りは極端に減少します。有機物をよく入れて、土づくりをしていることも濁らせる条件です。
A代かき10〜14日:二回目の除草機を押します。できれば正条植にして横方向に押したいのですが、ダメならできるだけ幅の広い除草機を選ぶといいでしょう。株元をかき混ぜる除草機も効果があります。
B代かき15〜20日:浅水か落水して、草を埋め込むように、ゆっくり押すのがいいでしょう。
C代かき20〜30日:草の多いところを手取りする。どの草が優先化して、害になるのか田んぼの持ち主ならわかっているはずです。コナギ、ヒエはできるだけ取って埋め込みますが、表の害にならない草は放っておくことべきです。
D出穂前:この頃になると稲の株元に小さなヒエが生えています。たいてい小さな穂をつけていますので、刈り取ります。
E収穫前:よく取っていたつもりでも、ヒエやタカサブロウ、ヒメミソハギ、アメリカセンダン草、草ネムが伸びてくるので、刈り取りします。

 手取中耕除草の技
かつては田植後七日〜十四日に「雁爪打ち」と称するきつい仕事が奨励されていました。しかも落水して、「朝夕ではなく、天気のよい日中が効果が上がる」と教え込まれていたようです。この仕事は男でも一日に四アールが精一杯だったそうです。株間を「雁爪」で5〜10戦地の深さに起こしていくのだから、大変だったろうと思います。ところが今考えると、この仕事にはそんなに除草効果があるとは思えないのです。だから「回転除草機」が登場すると、「雁爪打ち」に置き換わっていきました。当然だったでしょう。回転除草機なら一日に50アールはできるからです。しかも初期の濁り水効果もこちらの方がはるかに高いのです。ですから、もう戦前には回転除草機が七割以上も普及していたということです。

 除草機の種類
除草機の種類は四種類に分けられます。
1)ガンヅメ(雁爪)雁の脚の爪を連想させる格好から命名されました。これで株間の土を天地返ししていきます。あえて行う意味はないでしょう。除草機の原型だったので、今でも回転除草機をガンヅメと呼んでいる人がいますが、正確ではありません。
2)掻き爪 板に突起を打ち付け(あるいは金属板に爪をつけ)たものに、取っ手の棒をつけたものです。土の表面をこすって、草を傷つけたり、水に浮かすことができます。デッキブラシを代用する人もいます。
3)回転除草機 明治時代に開発された。爪をつけた前後2つのドラムを回転させて、草を引き抜いたり、傷つけ埋没させる優れものです。最近は動力付のもの、乗用タイプが販売されていますが、一条に前後二つのドラムがないと、一つでは効果が劣ります。
4)株間除草機 株間を回転する線状のブラシで掻き取っていくものです。

 他の除草法との組み合わせ
水田では10p以上の深さの水をためると、ほとんどの草は生育できなくなるでしょう。太陽光線が遮断され、酸素が制限されるからです。こうした深水栽培に、中耕除草を組み合わせれば、伝統的な農法も十分効果を発揮するということです。ただ深水栽培のためには、畦を高くすること、田んぼの均平化を心がけること、長い丈夫な苗を植えることなどが条件になります。